民芸家具

松本民芸家具のウィンザーチェア



前から前を通り過ぎてはいたが、とても気になっていた
「松本民芸家具」を訪れた。
本部は長野・松本市にある。
1Fは主に小物、雑貨類、2Fは椅子、キャビネット
などの家具が中心。
2Fに上がって「シンプルなものを探しているんです」
と言ったのが始まりで、すっかりご主人の「ご講義?」
を受けることになってしまった。


創始者である池田三四郎氏が、白樺派の一人である柳 宗悦氏(1899〜1961。
息子の長男は工業デザイナーの柳宗理氏1915〜)の説いた「美の法門」
の講演を聞き感銘を受け、民芸の道にすすみ民芸家具の製作を通じて、
民芸新作運動に一生を捧げることを決意。民芸家具の製作を始める。


「民芸」という2文字に対して観光地でよく売っている「民芸品」
というくらいしかイメージがなかったのだが、
自分の知識・勉強不足があっさり覆されてしまった。
「民芸」という言葉を辞書で引くと「民衆の中で伝えられてきた実用的な手工芸(品)。
民俗性・郷土色が豊かで、素朴な味を持つ」とある。
以前、ドイツで有名なバウハウスや北欧の一連のデザインから見られるように、
日本と同じく「民芸運動」があったということだ。
家具を普段使いで仕上げているということだが、ここがすごい。
究極なまでに使いやすいように、見えない部分、
例えば椅子のアームの裏側を手で握った時にしっくりくるように曲線の仕上げ、
厚みがすべて異なっているのが重要なのだということだ。
某書籍にもかいてあったのだが、これはデンマークの家具デザイナー、
オーレ・ヴァンシア(Ole Wanscher。1903〜1985)が言っていたことと一致する。
立ったり、座ったりするときにアームをぐっと持つ、そのとき裏側に指が当たる、
ここをきっちり仕上げなくてはならないということなのだそうだ。
ここの家具は外国人からもとても人気があるようで、
贔屓にされているようだ。アメリカ・ロックフェラー氏も愛用しているという。
ご主人はイギリスや北欧の家具事情にも当然詳しく、
普通聞けない情報まで惜しげもなく披露してくれた。
ちなみに、看板のロゴデザインは人間国宝・芹澤ケイ介氏(1895〜1984)、
版画は棟方志功氏(1903〜1975)。
以前、青森の記念館を訪れたことがあるが、壮大な作品に度肝を抜かれた。
日本にもこんなに素晴らしい家具を作っている方がいるということに驚き、
そして自分の無知さに恥じた。何でも足元をよくみて進まないと滑ってしまうなぁと痛感した。
先週に引き続き、お茶までいただいてしまった。